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2016年に読んだ本ベスト5

今年ももう2月だが、去年を振り返る意味も含め読んだ本の中で印象に残ったものをランキングで紹介してみる。

2016年にAmazonで買ったのは192冊、セールでの漫画や雑誌まとめ買いもあるので、いわゆる「本」はおそらく約半分、実際呼んだのそのさらに半分で50冊程度だろうか。自分の人生ではかなり多読だった方だ。

5位. 壇蜜日記(壇蜜

壇蜜日記 (文春文庫)

壇蜜日記 (文春文庫)

いきなり不真面目な本?いえ真面目な本です。芸能界の仕事に関する不安・悩み・イライラや、飼い猫との昼寝、熱帯魚の飼育などの日々が淡々と綴られている。基本ネガティブだが頭の良さを感じさせる筆致で、同年代ということもありうっすらとした共感を感じながら読める。テンションを下げてぐっすり眠りたいときにベッドでパラパラと読むには最高の一冊であった。そのあと著名人のエッセイ本を漁るようになったが壇蜜日記に勝るものはまだ無い。3巻まで出ているがそちらは未読。

4位. 年収は「住むところ」で決まる(エンリコ・モレッティ

昔流行った「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」と同じマネー系新書のような煽りタイトルだが新進気鋭の経済学者の著書で、内容は副題の「イノベーションと雇用の都市経済学」がずばり言い表している(原題は"The New Geography of Jobs")。アメリカにおける都市間の経済格差、特にイノベーション産業のメッカとなっている都市(例:シリコンバレー)と衰退した都市(例:デトロイト)の比較を様々な観点から行っており、結論としては高付加価値産業は特定地域に留まる性質があり、それは計画的に達成されるのではなく偶然発生するだけ、ということだった。シリコンバレーであればショックレー電子、シアトルであればマイクロソフトがそこに居着いたのがいま栄えている理由の根本であって、周辺産業含めた収入の地域格差はそのように突出した地域が生まれる上で必要悪とも見なされるそうだ。10年ちょっと前なら、インターネットの発達とオフショア等により付加価値の高い仕事もどんどん世界中に分散していくというトーマス・フリードマンの”The World Is Flat (「フラット化する世界」)”の説が流行っていたので、実際には逆であるという考察としても大変興味深い。

3位. 戦中派不戦日記(山田風太郎

1945年当時、医学生として東京に暮らしていた筆者が書いた365日分の日記を原文のまままとめた作品。後年あの戦争を語ったものはどうしても個人的な感情や政治的な思想が混ざりがちだが、当時の学生が不自由な生活や戦争の勝敗や日本人の誇りについてどう考えていたかを生々しく物語る資料として、この本は自分には極めて新鮮だった。戦争でも続く学校の講義や演劇興行、連夜の空襲警報に麻痺する感覚、ついに自宅周辺が爆撃を受け炎の中を逃げ惑った夜、疎開先で聞いた玉音放送、意外とおとなしい米兵、手のひらを返す新聞と知識人…。2016年末に映画「この世界の片隅に」がヒットしたが、全く同じ戦時中の人々の生活が、この本ではリアルタイムの体験として描かれている。ちなみに山田風太郎の小説は一冊もまだ読んでいない。笑

2位. チームが機能するとはどういうことか(エイミー・C・エドモンドソン)

2016年に読んだビジネス書の中ではベスト。製造業の組立ルーチンなど決定的で管理可能な作業をチームで分担するための(古典的)ビジネス組織論と、高度で不確実な知的労働にチームで取り組むのに必要な理論は全く異なるという切り口が明快で良い。特に「チーム内で仕事が完全に分割・分担され何の衝突なく進むのが良い状態」という前提自体が間違いであり、高度な知的労働では異なる意見を真摯にぶつけあう緊張感を保ち、個人的対立は避けながら相互理解まで議論を突き詰められる環境が重要、というのが目からウロコだった。そのためにリーダーは誰かに足を引っ張られることのない「心理安全」を確保し、役割と分担が流動的に動くチーム作りを目指すべし、という話は多くの日本人にとって非常に耳が痛い話だろう。なぜなら意見の相違がそのまま人間的衝突につながりやすいので。

1位. 人間臨終図巻(山田風太郎

古今東西の有名人の死に様だけをただひたすら説明した悪趣味な本。Kindle新装版では15歳から100歳超まで943人分の死が書かれている。若くして才能を発揮するも結核自死で夭折した人、絶頂期に脳や心臓の急病で倒れた者、晩年ガンや老衰でひっそりとこの世を去る人…。死ねば偉人はその功績のみで語られるが実際には人間的に破綻した人や晩節を汚した人、非業の死を遂げた人も多かったことが分かる。例えば自動車産業の父と言われるFord創始者のヘンリー・フォードは社長を譲った息子と対立し、彼の病死後トップに返り咲くも社内外から非難の的となり業績を回復させられないまま引退している。この本も寝る前にちょっとずつ、半年かけて4巻まで読破できたのは、生き方について感じることがいろいろ書いてあったからだと思う。が、正直オススメはしない。

全体として、これまでにくらべて技術書やビジネス書の比率が下がり、森博嗣の小説もあまり読まなかった(新作を買ってはいる)。代わりにエッセイや日記が増えたが、2017年はちょっとバランスを戻したいと思っている。今読んでいるAmazon Way in IoTが年間ベストに入りそうな勢いなので、読み終わったらまたブログで紹介するかもしれない。邦訳されればもっと読まれると思うんだが。